无浪潮中心

ノー・ウェイブやインダストリアル、その他

2. Demolition Group 『Mizerika』

こんばんは。

 

 早速ですが、

 

今回は社会主義政権時代のユーゴスラビア(スロベニア)で生まれたバンド、Demolition Group(デモリション・グループ)をご紹介したいと思います。

 

 

 

 

80年代のユーゴスラビア国内にはVideosexの様なシンセウェーブのみならず、PaukZak Fatalistなどのポストパンク、Bojlerをはじめとするダーク・ウェイブ、ノイズ、インダストリアルミュージック、(プロト)グラインドなど数多くのバンドが存在しました。

 

本来であればユーゴの「ノー・ウェイブ的」なバンドをご紹介すべきかと思いますが、

 

 今回はユーゴで一番好きなアーティストDemolition Groupとその作品をおすすめさせてください、、、

 

 

 

 

 それでは

 

連邦国家としての体制が崩壊しつつある1983年、「Gast'r'bajtr's(ガストアルバイターズ)」(=出稼ぎ労働者の意)の名で結成。

 

当時の音楽性は、公式サイトで「典型的なホワイト・ファンク」と紹介されている通り、当時のユーゴとしては珍しくないサックス、ファンキーなベースライン、コーラスギター、といった楽曲が多く演奏されていました。(Miladoika Yoouneedなんかもそんな感じ)

 

 

 

しかし1986年、グループの方向転換を図るとともに「Demolition Group」へと改名されます。

 

同年に出されたデモ『Mizerika』は陰鬱としていてセンシティブなシンセ主体の作品となっており、それまでの彼らの楽曲とは大きく異なるものでした。

 

その後、『Mizerika』の収録曲「You Better」にギター、ボーカルを加えた楽曲「Beautiful Site/Soft」と「Beautiful Site/Hard」、さらに新曲を収録したデモ音源『Vox Clamantis』をリリース。

 

1988年、前2作品の楽曲をリマスター/再構築したファーストアルバム『Mizerika』がHiara Records(ヒアラ・レコーズ)からリリースされます。(デモ版と同名なので、ここでは1986年版を「デモ版」、1988年版を「ファースト」と呼びます)

 

デモ版の「You Better」は最終的に「Beautiful Side1」と「Beautiful Side2」という楽曲として収録され、デモ版「Love Street」はファーストでは「You Better Stay Alive」に、ファーストに収録されている「Love Street」は全く異なる楽曲になるなど、ファンにとっても少々ややこしい作品です。

 

ファースト『Mizerika』に収録されている楽曲のいくつかは、デモ版からの冷たく無機質なサウンドを引き継ぎながらも、「Fusion of Heavy Metal」と形容される様により攻撃的な作品になりました。

 

そして何よりもGoran Salamon(ゴラン・サラモン)の”怒鳴り”の様なボーカル。

 

デビッド・バーンイアン・カーティスThe Pop Groupマーク・スチュアートは「精神疾患」や「癇癪」などと形容されることの多いボーカリスト達ですが、ゴラン・サラモンもそこに加えられるべきアーティストのひとりだと思います。

 

残念ながらファースト『Mizerika』以降ゴランは歌ウマになり、なかなか”怒鳴”ってくれなくなりますが、、、

 

 

 

 

1993年にリリースされたセカンド『BAD GAG 2』は商業的成功をおさめ、またKraftwerkのトリビュートアルバム『Train Slovenia Express』に「The Model」のカバーが収録されたことから東欧、中欧において広く知られるようになります。

 

90年以降、歌謡やポピュラーミュージックとしての側面も強くなっていき、ボーカルとサックスを主体としたバンドへと変化していきました。

 

1995年にリリースされた『Deep True Love』はスロベニア国内のレコードオブザイヤーに選ばれ、またスロベニアの歌姫とも呼ばれるようなポピュラーミュージシャンと楽曲を出すなど、ただの「陰鬱系ウェーブ」とは程遠いアーティストになっていくのでした。

 

 

 

 

しかしながら、私はファースト『Mizerika』が一番好きです。(「Bad Gag」だけはデモ版が好きですが)

 

単調なリズム、不安になるようなベースシンセに粗いギターのサウンド、癇癪持ちの怒鳴り声を思わせるボーカル、万人受けはしないかもしれませんが、あなたがボードレールの詩だとかフランシス・ベーコンの絵画が惹かれるタイプなら、きっと好きになる作品だと思います。

 

 

 

 

というわけで、最後にファーストから「You Better Stay Alive」「Beautiful Side2」を。

 

あと、「ノー・ウェイブ」を探してこちらのブログにたどり着いた方のために、、

 

ノイズ、エクスペリメンタル色の強い彼らのサイドプロジェクト「Silver Baracudas(シルバー・バラキューダズ)」の楽曲も貼っておきます。

 

それではまた。

 

youtu.be

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〇今日のアーティスト

・Bojler

Demolition Group(ゴラン・サラモン)

Joy Division(イアン・カーティス)

Kraftwerk

・Miladoika Yoouneed

・Pauk

The Pop Group(マーク・スチュアート)

Talking Heads(デヴィッド・バーン)

・Videosex

・Zak Fatalist